どうも、ノマドクリエイターのショウヘイ(@shohei_creator)です。
物語づくりの世界では、カタルシスが重要視されています。読者に強烈なカタルシスを得させる物語は、人気作になりやすい・・・・・・つまり商品として売れやすいからです。
今回の記事では、まずはカタルシスの定義について説明します。その後、読者に強烈なカタルシスを得させる方法を紹介しますね。
目次
カタルシスとは|心理学的な定義
カタルシスは、もともとは、ギリシア語における浄化を意味する言葉です。
古代の哲学者のアリストテレスは、舞台の悲劇を見る観客を観察していました。すると、悲劇に接した観客が恐れや憐れみを味わう過程で、心の抑圧を解放・・・・・・すなわち感情を浄化していることに気付きました。
アリストテレスは、この心の抑圧の解放をカタルシスと呼びます。そして、著書『詩学』の中に悲劇論にて、心の抑圧の解放という意味でカタルシスを使います。
これにより、『カタルシス=心の抑圧の解放』という認識が広まりました。

カタルシスとは|創作用語の定義
創作用語のカタルシスの意味は、アリストテレスの使い方と同じです。つまり、心の抑圧の解放によって得られる『清々しさ』です。
もう少し詳しく説明しましょう。
読者は、物語の登場人物に感情移入します。特に主人公は、読者の分身です。読者は、主人公を通して、物語の出来事を擬似体験します。
たとえば、主人公が魅力的な異性と出会い、数々の困難を乗り越える大恋愛の末、幸福に満ちた結婚を迎えられたとします。主人公を通して、読者は『魅力的な異性と大恋愛の末に幸せな結婚を迎えること』を疑似体験します。

もしも、読者が現実世界で『魅力的な異性と出会い、幸せな結婚式を迎えたい』と望んでいたなら、読者の願望が擬似的に叶えられます。心の抑圧が解放されて、清々しい快感を味わえます。
この清々しい快感こそ、創作用語のカタルシスが示すものです。

カタルシスの具体例|半沢直樹
カタルシスの具体例をあげましょう。
一時期、ドラマの『半沢直樹』が大流行しました。
「やられたら やり返す 倍返しだ!」のセリフで有名な、あのドラマですね。
画像引用元:ニコニコ静画|半沢直樹|投稿者 Yuuri(http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im3422537)
『半沢直樹』が流行した理由は、あのドラマを見ることで、普段から上司に対して抱いているイラ立ちを解消できた(カタルシスを得た)サラリーマンが多かったからです。
ドラマでは、意地悪な上司に対して、主人公の半沢直樹が知恵を働かせます。そして、痛烈な仕返しを実行しました。
それを見たテレビ視聴者は、半沢直樹を通して、擬似的に『上司に対する仕返し』を疑似体験できました。その結果、自分が持っていた『上司に対するイラ立ち』が解消されてたので、スカッとした清々しい気分になれました。
上司に対する仕返しのカタルシスを得られる。
これが半沢直樹が大ヒットした理由です。
売れる小説・ラノベの物語は、強いカタルシスを得られる
読者が小説やラノベを読んで、物語に触れる理由は、カタルシスを得るためです。
読者が『現実の日常生活』に満足しきっているなら、わざわざ空想の物語を求めません。そんな空想物語よりも、日常生活の方が楽しいからです。
読者は『現実の日常生活』で満たせない願望があるからこそ、それを擬似的に叶えられる物語に触れて、カタルシスを得ようとします。

『読者はカタルシスを求めて物語に触れる』ことを理解しているか否かで、売れる物語を書けるかどうかに、大きな差が生まれます。
カタルシスを無視して『作者本人が楽しめる物語』を作ろうとする作家は、人気作を生み出すことが困難です。
商業作家の本分は『狙った読者層が楽しめる物語を組み立てる』ことです。自己満足の物語を作ることではありません。
小説・ラノベは、お金を払って買われる『商品』である
プロとして作家を目指すなら、小説・ラノベが『お金を出して買われる商品』という事実を意識しましょう。
市場の需要を無視した商品は、売れません。同じように、狙った読者層が求めるカタルシスを無視した物語は、読まれません。ただの紙束です。

商品の需要と供給について、具体例を挙げましょう。
あなたは、休日の午後の運動場で、ランニングしています。

運動して喉が渇いたので、目についた自動販売機の方へ向かいました。
あなたは『のど越しが爽やかで、水分補給に優れた飲み物』を飲みたいと考えています。

たとえ話を分かりやすくするために、自動販売機で売られている商品は、
次の3つとします。
- 小豆の香りが濃厚な、ドロッとしたお汁粉
- キリッとした苦みが売りのブラックコーヒー
- スポーツマンの水分補給を目的に作られた、爽やかな風味のスポーツ飲料
さて、あなたは3つの飲み物から、どれを選びますか?
・・・・・・もちろん、スポーツ飲料ですよね。
どうして、お汁粉やコーヒーを選ばなかったのか。
その理由は、自分の望み(需要)を的確に応える飲み物ではないからですよね?
消費者の需要に応えられない商品は、売れません。物語のような創作物となると、この事実を忘れてしまう作家志望が多いようです。
読者が物語を求める理由は、カタルシスを得るためである。
カタルシスを得られない物語には、商品価値が無い。
このことを念頭に置いて、物語を作っていきましょう。
読者から「カタルシスがない」と言われる小説・ラノベの特徴
読者にカタルシスを与えられない小説・ラノベの物語の特徴は、主人公が置かれている過去と現在に大きな差が無いことです。
カタルシスは、読者の心の抑圧が解放された時に得られる快感です。
カタルシスを得るためには、感情移入する対象である主人公が強い抑圧を掛けられていることが前提です。敵に敗北するにせよ、次々と不幸に見舞われて人生に絶望するにせよ、主人公がどん底に落ちていることが重要になります。
主人公が強烈に抑圧されていればいるほど、努力して その状況から這い上がり、その果てに敵に勝利したり難題を解決できた時には、状況の高低差は大きくなります。
主人公の置かれる状況の高低差は、すなわち読者が得られるカタルシスの大きさを意味します。
昨今の小説……とりわけ小説投稿サイトで人気のチート無双系の物語ほど、読者者から「カタルシスがない」と言われがちです。この理由は、主人公が絶命の危機に陥るほどの困難な状況に置かれないからです。
最初に強烈な抑圧が無ければ、問題を解決した時のカタルシスは得られません。物語の前後で状況の高低差が生まれにくいチート無双系の主人公は、敵を一掃する爽快感を読者に与えられても、心が震えるようなカタルシスは与えられないのです。
小説・ラノベで強いカタルシスを得させる方法
読者にカタルシスを得させる基本は『読者が日常生活に抱いている願望を汲み取り、その願望を主人公が達成する物語を作る』ことです。
物語から得られるカタルシスが強ければ強いほど、読者は熱狂的に物語を求めます。書籍は飛ぶように売れ、大ベストセラー作と呼ばれます。
ここで、強烈なカタルシスを得させる2ステップを紹介しましょう。
- 物語の前半で、敵役が主人公を徹底的に痛めつける
- 物語後半で、主人公に有力な情報や仲間を与えて、敵役に反撃する
上記の2ステップを具体的に解説します。
物語前半では、主人公が敵役によって痛めつけられる展開を作ります。
主人公は、自分の大切な存在(自分の命や家族)を危険にさらされます。まだ敵役に反撃できる力は無いので、ひたすら我慢に徹します。もしくは、敵役から逃げ続けます。主人公が不安や恐怖に苦しむ姿を描きましょう。
これは『読者が敵役に怒りや憎しみを抱くように仕向ける』ためです。
物語後半では、主人公に有力な情報や仲間を与えます。敵役に反撃して、問題解決できるかもしれない手掛かりです。
ただし、すぐに敵役を倒させません。主人公が強くなると同時に、敵役も強くします。激しい攻防を繰り返すことで、読者は主人公を応援したくなり、強く感情移入します。そして、敵役に対する怒りと憎しみを深めます。
物語の後半の半ば(本編の3/4を過ぎたところ)から、主人公が敵役に決定的な一撃を食らわせます。そこから展開は加速して、主人公の怒涛のごとき連続攻撃。そして、見事に敵役を倒します。
主人公が敵役を倒して喜びに叫ぶと同時に、読者も同様の喜びに襲われます。カタルシスです。
敵役が憎ければ憎いほど、強ければ強いほど、主人公が敵役を倒した時に、読者が得るカタルシスは強烈になります。
物語前半では、敵役によって主人公を痛めつけさせます。反撃の機会を与えても、そう簡単に敵役を倒せません。主人公が強くなれば、敵役も強くします。主人公が血と汗にまみれるような苦労を味わってから、ようやく敵役を倒させてあげます。
全ては、読者が強烈なカタルシスを得るためです。
まとめ
この記事の内容のまとめです。
- カタルシスは、もともと『浄化』を意味するギリシア語。
- 心理学的なカタルシスの意味は、心の抑圧の解放。
- 創作用語のカタルシスの意味は、物語に触れることで、現実世界に抱ている願望を擬似的に叶えたことによって得られる、清々しい快感。
- 読者に強烈なカタルシスを得させる物語は、大ヒットする。
- 読者はカタルシスを求めて有料の小説・ライトノベルを購入する。読者にカタルシスを提供できない小説・ライトノベルは売れない。
- 読者に強烈なカタルシスを得させる2ステップ
- ステップ1:物語の前半で、敵役が主人公を徹底的に痛めつける
- ステップ2:物語の公判で、主人公に有料な情報や仲間を与えて、敵役に反撃させる