どうも、ノマドクリエイターのショウヘイ( @shohei_creator )です。
あなたは、どんな風に物語を作ればいいか、悩んだことはありますか?
物語作りは、大きな型はあれど『この手順でやれば上手くいく』というようにマニュアル化できません。
王道要素を詰め込めば、読者受けは良くなります。
しかし、あまりにも王道要素ばかりだと、読者から『薄っぺらい物語』と感じられ、飽きられてしまう危険もあります。
今回の記事では、人間の欲求段階について触れつつ、読者が真に求めている物語の構造について考察します。
物語の基本軸は『主人公の成長』である
はじめに、この記事の考察の答えを伝えます。
大人気になる物語の基幹は『主人公の成長』の一言に尽きます。
ありきたりな言い回しですし、抽象的な表現ですが、これが本質です。
これから、人間の欲求段階や物語の王道要素を交えつつ、なぜ『主人公の成長』が人気物語の基幹なのか、具体的に説明します。
マズローの欲求5段階説とは
欲求5段階説とは、心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した『人間が持っている5つの階層的な欲求』を意味します。
欲求の段階は、下から順に、次のようになります。
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 所属と愛の欲求
- 社会承認の欲求
- 自己実現の欲求
人間の欲求は、番号の早い順(ピラミッドの下層から)に現れます。
そして、現在の欲求段階(例:所属と愛の欲求)が満たされると、次の欲求段階(例:承認の欲求)へ順々に進みます。
人によっては、特定の欲求段階を飛び越えることもあります。しかし、大半の人は、下の欲求段階から1段ずつ上へ上がっていきます。
現代の日本人の場合は、第1段階と第2段階の欲求は、充分に満たされています。
しかし、第3段階以降の欲求から、充分に満たされない人が多く現れ始めます。
欲求の第1段階:生理的欲求
欲求の第1段階:生理的欲求とは、生命を維持するために必要な状態を満たそうとする欲求です。
具体的には、生命維持に必要な食料・飲料、睡眠時間の確保などです。
欲求の第2段階:安全の欲求
欲求の第2段階:安全の欲求とは、安全・快適に生活するための住居・衣類・医療・治安の状態を満たそうとする欲求です。
欲求の第3段階:所属と愛の欲求
欲求の第3段階:所属と愛の欲求とは、家族・友人・恋人から愛され、地域社会(学校や会社など)の一員として所属していたいという欲求です。
欲求の第4段階:社会承認の欲求
欲求の第4段階:社会承認の欲求とは、自尊心・名誉・功績を求める欲求です。
具体的には、仲間から特別視されたい、優秀な功績を収めて称賛されたい、社会的な有名人になりたい、高級ブランド品を所持したいという願望です。
欲求の第5段階:自己実現の欲求
自己実現の欲求は、第1段階~第4段階の欲求とは、次元が変わります。
自己実現欲求は『自分の人間的成長を追求して、理想の状態へ至りたい』という成長願望です。
自己実現の欲求は、人それぞれ異なり、多種多様です。
具体例は、さらなる知識・技能の獲得、限界の挑戦、地位・名声の向上、生活水準の潤沢、難題の達成などが挙げられます。
個々人の自己実現欲求に共通していることは、内的成功ーー心の豊かさを得て幸せになることです。
物語の王道要素と欲求5段階の対応について
人気の物語には、いわゆる王道要素が多く含まれています。
今回は、若者向け小説(ラノベ)に頻繁に見受けられる、主人公の王道要素を抜粋しました。
- 主人公だけの特殊能力
- 幸運に恵まれる(才能・資産・魔法武具の取得)
- 最強の能力による無双劇(俺 TUEEEEE )
- 万能な能力による大活躍
- 多くの仲間に恵まれる
- 数多くの登場人物から親しまれ、人望が厚い
- 周囲の登場人物からの称賛
- 多くの異性から好意を寄せられる(ハーレム)
- 性的場面の遭遇(ラッキースケベ)
- ヒロイン(特にメインヒロイン)と交際
では、上記の王道要素を欲求5段階に当てはめてみます。
すると、次のようになります。
- 欲求の第3段階:愛と所属の欲求
- 多くの仲間に恵まれる
- 多くの異性から好意を寄せられる(ハーレム)
- 性的場面の遭遇(ラッキースケベ)
- ヒロイン(特にメインヒロイン)と交際
- 欲求の第4段階:社会承認の欲求
- 主人公だけの特異能力
- 幸運に恵まれる(才能・資産・魔法武具の取得)
- 最強の能力による無双劇(俺 TUEEEEE )
- 万能な能力による大活躍
- 数多くの登場人物から親しまれ、人望が厚い
- 周囲の登場人物から功績を称賛される
主人公の王道要素は、みな第3段階と第4段階の欲求に対応しています。
しかし、第5段階の欲求(自己実現)に対応していません。
言い換えれば、主人公の王道要素を詰め込んだだけのテンプレ物語では、心の豊かさに直結する『自己実現の欲求』までは満たせません。
王道要素を詰め込んだテンプレ物語は、心のお菓子
そもそも、読者が空想の物語を読みたいと思う理由は『登場人物の体験を通して、自分が現実で満たせなかった望みを擬似的に叶えるため』です。
王道要素を詰め込んだテンプレ物語は、第3段階と第4段階の欲求を擬似的に満たしてくれます。
それなので、テンプレ物語は、多くの読者に受けやすいと言えます。
しかし、第5段階の欲求(自己実現)については、テンプレ物語では、読者の欲求を擬似的に満たせません。
自己実現は『自分の人間的成長を追求して、理想の状態へ至りたい』という成長欲求です。
人間的成長は、持って生まれた天性・神様から与えられた才能などの『努力の要らない幸運』では、決して手に入りません。
主人公が外的な試練(強大な敵など)を倒し、内的な試練(人間関係の摩擦による葛藤など)を乗り越える過程で、ようやく手に入るものです。
テンプレ物語が『中身が無くて薄っぺらい』と言われる理由は、登場人物の人間的成長による『自己実現のカタルシス』を読者が体験できないからです。
たとえるなら、王道要素を詰め込んだだけのテンプレ物語は、心のお菓子です。
お菓子は、手軽に食べられますし、味も甘くて(しょっぱくて)美味しいです。
しかし、いくら お菓子を食べても、体の成長に充分な栄養は摂取できません。あくまでも、美味しいだけです。
それと同様に、テンプレ物語は、無双・称賛・承認・ハーレムの快感を手軽に楽しめる娯楽です。
しかし、読み手に『自己実現のカタルシス』を体験させません。人生を懸けて何かに取り組む熱狂・・・・・・人生の真の充実感を味わせてくれません。
主人公が試練を乗り越えることで、読者は『自己実現』のカタルシスを体験できる
読者が物語を読んで『自己実現のカタルシス』も体験するためには、さまざまな試練の乗り越えることによる『主人公の人間的成長』を描く必要があります。
『主人公の人間的成長』を描く上で役に立つ物語の構造として、世界の神話に共通して見られる『行きて帰りし物語』がオススメします。
主人公の人間的成長を描く『行きて帰りし物語』とは
『行きて帰りし物語』は、アメリカの神話学者ジョセフ・キャンベルが見つけた、世界の神話構造の共通点です。
『行きて帰りし物語』は、大きく分けて、次の3構造で成り立ちます。
- 主人公の旅たち(日常から非日常の世界へ)
- 試練を突破する(主人公の人間的成長)
- 主人公の帰還(非日常から日常の世界へ)
主人公の旅立ち
主人公は、平和な日常の世界から、危険あふれる非日常の世界へ旅立ちます。
わざわざ危険を冒してまで旅に出る理由は、主人公の『何かしらの欠落』を回復するためです。
たとえば、童話として有名な『オズの魔法使い』では、少女のドロシー・飼い犬のトト・カカシ・ブリキの木こり・ライオンの5名が登場します。
この5名は、それぞれ何かしら欠落を抱えています。それを回復するために、一緒にオズ王国を目指します。
- ドロシーとトト:故郷カンザスの家に帰りたい
- カカシ:脳(知恵)が欲しい
- ブリキの木こり:心が欲しい
- ライオン:勇気が欲しい
試練の突破
オズの魔法使いの元に到着したドロシー達。
魔法使いに願いを伝えると、魔法使いから「西の魔女を倒せば叶える」と言われます。
そこで、ドロシー達は、西の魔女の元へ向かおうとします。
ドロシー達の接近に気付いた西の魔女は、さまざまな刺客(狼・カラス・蜂・兵士)を仕向けます。
しかし、カカシ・ブリキ・ライオンが活躍によって、ドロシーは刺客を退けます。
ドロシーは、とうとう西の魔女の元まで到着しました。そして、西の魔女を倒すことに成功します。
主人公の帰還
オズの魔法使いの元に戻ったドロシーは、気球に乗ってカンザスまで戻ろうとします・・・・・・が、トトの脱走によって失敗。
その後、ドロシーは南の良い魔女に会います。南の魔女の助言を聞くことで、ドロシーは ようやくカンザスへ帰ることが出来ました。
登場人物の成長
カンザスに帰れたドロシーは、冒険を経験したことで、あらためて平和な日常と家庭の大切さを感じました。
カカシ・ブリキ・ライオンは、オズの魔法使いから直接的に望みを叶えてもらっていません。
カカシは糠・ピン・針が詰まった頭をもらい、ブリキはおがくずを詰めたハート型の絹の袋をもらい、ライオンは勇気の出る薬をもらいました。それらは、あくまでも代替物です。
しかし、カカシ・ブリキ・ライオンは、冒険を通して、自分が望んでいた物を『最初から持っていた』ことに気付きました。
主人公の成長を促す外的試練について
外的な試練とは、分かりやすく言えば、物語上の敵キャラクターや障害物です。
悪の組織や敵対組織、魔王や魔獣などが代表的ですね。
地獄や極寒など、厳しい環境も外的試練の1つです。
外的な試練は、それこそ『現在の主人公をギリギリ殺せる』程度の難度をオススメします。余裕をもって乗り越えられる試練は、試練として退屈です。
RPGゲームの難易度は、その時点の主人公が程ほどに苦労するように調整されています。それなりに苦戦するからこそ、戦いに面白味がありますし、勝利した後の達成感があります。
『主人公の人間的成長』のみならず、『読者に勝利のカタルシスを体験させる』という意味でも、外的試練は困難な方が好ましいですね。
主人公の成長を促す内的試練について
内的な試練とは『主人公が抱える弱点・劣等感の克服』や『人間関係における葛藤』のことです。
物語に対立構造を作ると面白くなると言われますが、これは主人公の内的な試練の数が増えやすくなるからでもあります。
個々の登場人物の価値観を具体的に掘り下げておくと、内的な試練を作りやすくなります。
登場人物の行動は、その人物の価値観から生まれます。価値観を掘り下げれば、その登場人物独特の行動を想像しやすくなります。
まったく同じ価値観の登場人物なんて、めったにいません。と言うことは、複数の登場人物がいれば、その数だけの固有の行動が生まれ、衝突が発生します。
登場人物の価値観のぶつかり合いこそ、主人公を人間的に成長させるドラマティックな試練を作り出します。
記事のまとめ
この記事のまとめです。
- 人気になる物語の基軸には『主人公の成長』がある
- 物語の王道要素は、欲求段階の3段階と4段階を満たせるが、5段階の自己実現欲求は満たせない
- 主人公を成長させる物語は『行きて帰りし物語』の構造が使いやすい
- 外的試練は、主人公を殺せる程度に厳しめにする
- 主人公に弱点・劣等感を持たせると、内的試練を作りやすい
- 個々の登場人物の価値観を具体的に深掘りすると、価値観の衝突が起きて、内的試練が起こりやすい