どうも、ノマドクリエイターのショウヘイ( @shohei_creator )です。
今回の書評で紹介する創作資料は、小池一夫氏の著作【小池一夫のキャラクター創造論】です。
キャラクター創作に特化した創作論ということで、興味を持っている人も多いことでしょう。どのようにして魅力的なキャラクターを作るのか、気になるところですね。
2000 年より、大阪藝術大学映像学科教授を務め、『キャラクター創造論』を教える。漫画原作の作品としては【子連れ狼】【御用牙】【修羅雪姫】などが有名。行進育成のための創作塾『劇画村塾』を開設している。
なお、小説・ラノベのキャラクター設定の作り方については、こちらの記事に詳しくまとめています。興味がありましたら、ご覧ください。

目次
本編の内容を大まかに知ってもらうために、目次の記載を引用しました。
第一章 《リドル》って何だ?
PiP! ってなンだ?
「物語」ではない、《キャラクター》から考えよう
キャラクターは一人では起たない
「まず悪より始めよ」
主役と敵役はベラベラ喋らない
《リドル》の達人になろう手塚治先生からの質問
梶原一騎さんの質問
第二章 「起承転結」は《主謎技感》だ!
主謎技感の意味を考える
読者が飽きないキャラ創り第三章 キャラに息吹を
魅力的な《ナンバー2》を創る
あなたの《願い》はなンですか?
大きな《願い》=《夢》がキャラクターの行方を決める
キャラクターには《願い》を問いかけてみよう
《願い》と《弱点》
《くせ》は漏れ出す内面
キャラクターに《口癖》はあるか?
《しぐさ》で語らせる第四章 どうやってキャラクターを生み出すか
『七人の侍』を観て、キャラクターの起て方を学ぼう
主要な三人のキャラクターを一気に起てる
《繰り返し》でキャラクターを起てる
キャラクターの一番《突出している部分》を見せる第五章 「時代物と「歴史物」の違いって何ンだ !?
「歴史の IF 」……《虚々実々》が読者を惹きつける
大河ドラマの限界とは
信長はなぜ「平蜘蛛の茶釜」を欲しがったのか?
《ごひいき》はあなたと相手との《関係性》で決まる
スポーツの世界に《キャラ起て》を学ぼう第六章 ラストシーンは余韻が大事
《余韻》が読者を惹きつける!
一週間前の「晩ごはん」を覚えていますか?第七章 キャラクターのプロファイリング
《古いもの》の中に宝が埋まっている!
キャラクターのモデルを探す
仏像(=キャラクター)は性質や来歴を《見た目》で表す
人間は本能的にキャラクターを求める
動物は人類の最古の隣人
《マスコット》だけじゃない動物キャラクター
老若男女に愛される動物キャラクターの魅力とは?
キャラクターには《メタモルフォーゼ》が必要
【出典元】
著者:小池一夫 表題:小池一夫のキャラクター創造論 P2-3 出版:ゴマブックス株式会社 出版年月日: 2016 年 8 月 10 日 初版
本編の内容
第一章 《リドル》って何だ?
見慣れない《リドル》というキーワードですが、これは『謎』のことです。小池氏が『謎』を《リドル》と呼んでいるだけなので、特別な意味はありません。
『謎』は、その答えが分からないからこそ、人を惹きつける力があります。その効果を実感してもらうために、小池氏は『謎』のことを《リドル》と呼ぶようにしたそうです。
第一章については、これといって目を引くようなことは書かれていません。強いて言えば、『主人公や悪役本人に自己紹介させるのではなく、第3者のセリフを使って説明しましょう』くらいでしょうか。
第二章 「起承転結」は《主謎技感》だ!
はじめに、《主謎技感》という言葉の意味について説明します。
《主》とは主人公、《謎》は文字通り、《技》は読者の予想を裏切るどんでん返し、《感》とは感動のことを意味しています。
ざっくりと一連の繋がりを説明するなら、こんな感じですね。
はじめに主人公に特徴的な言動を取らせて、その個性を読者に印象づけましょう。
ところどこころに謎を配置して、主人公に謎の答えを追求させて、どんどん物語を動かしましょう。
予想できる展開はつまらないので、主人公を徹底的に追い詰めたり、絶望的な場面を用意して、読者に「この先はどうなるの !? 」と思わせましょう。
希望と絶望、期待と不安、喪失と獲得。相反する状態を繰り返すことで、読者の心を動かしましょう。負の状態から正の状態へ一気に転換した時ほど、読者に感動を与えられます。
第二章についても、これといって目新しい情報はありません。プロット構成について何かしら学んだことのある人にとっては、読み飛ばしても問題ない章ですね。
第三章 キャラに息吹を
第三章は、主人公と敵役のキャラクター設定について説明しています。
要点を かいつまんで紹介していきましょう。
主人公には弱点を持たせて、敵役には欠点を持たせます。展開が面白くなるためには、主人公が追い詰められる必要があるので、主人公に弱点を持たせるわけです。敵役の欠点とは、主に道徳心や共感能力が欠けているという意味ですね。非道な行為を平然と実行できるからこそ、どんどん主人公を追い詰められます。
他には、主人公に強烈な願望を持たせること。行動を起こす原動力になるからですね。
あとは、発言で登場人物を説明するのではなく、身振りや口調の癖で表現しましょうと提案しています。癖は人間性を間接的に表すものなので、人物設定を説明する手段として丁度いいからです。
第四章 どうやってキャラクターを生み出すか
第4章は、キャラクターの生み出し方を説明する章……のように思えるかもしれませんが、どちらかと言うと、キャラクターの個性を描く方法を説明しているように感じられます。
具体例として『七人の侍』が挙げられています。7人の主人公を区別しやすいように、どんな工夫が加えられているか説明しようとしています。
ざっと眺めてみた感じでは、『対比』を使っているようでした。とある状況に一般人と主人公の侍を放り込んで、その主人公が一般人と違う反応を見せた(冷静沈着、温厚など)なら、読者は主人公をを特徴ある人物と感じられる……みたいな感じですね。
『キャラクターは、周囲の人物や環境との対比によって、人物の個性が鮮やかになる』ということを知っているのなら、第四章も読み飛ばして構わないでしょうね。
第五章 「時代物」と「歴史物」の違いって何ンだ !?
章題の通り、時代物と歴史物の話の違いについて説明されています。
ざっくりと説明するなら「時代劇は史実と違う内容を入れられるから、面白おかしくしやすい」という感じですかね。
時代劇の改変事例として、織田信長と平蜘蛛の茶釜の話が挿入されています。史実によると、信長は平蜘蛛の茶釜をひどく気に入っていたらしく、所有者の松永弾正に何度も交渉を持ちかけていたようです。
単に信長が気に入っただけかもしれませんが、ここに IF の要素『茶釜で沸かした湯の表面に、自分の死んだ時の光景が映る』を加えて、面白い筋立てを作れるぞ……と著者は書いています。
具体的には、常に誰かから命を狙われる身の信長にとって、自分が死ぬ瞬間の状況が分かる茶釜があれば、その事態を回避できる。だから、茶釜に対して強烈に執着しているんだ……という感じです。
第六章 ラストシーンは余韻が大事
物語の終わりに余韻を残すことの大切さについて説明されている章……なのですが、具体的な方法については書かれていません。
せめて『これからも時間の経過が続いていくことを語る』や『さらなる空間が広がっていくことを予感させる』など、何かしらの技法を紹介しておいて欲しいものですね。
正直なところ、第六章も読み飛ばして構いません。
第七章 キャラクターのプロファイリング
プロファイリングとは、断片的な情報から人物像や特殊な事情を推測することのようですね。
たとえば『いつも革靴が綺麗に磨かれているから、足元まで意識を払うほどのオシャレ好きかもしれない』という感じです。
現実にいる人々を観察して、何か特徴を見つけて、「この人はこんな感じの人かな? これをするってことは、あの事情を持っているのかも」と推理することをオススメしています。
私が本著の中で目新しい情報のように思えたところは、著者が仏像にキャラクター造形のコツを見出している点ですね。
仏像は、その仏像のモデルとなった仏様の機能(知恵や慈愛など)を象徴する外見や道具を備えてます。たとえば、病気を治す薬師如来は、手に薬壺(薬を保管・携帯するための壺)を持っています。
キャラクターの個性を外見や持ち物で描写する方法は、広く知られていることでしょう。そのことが仏像にも適用できるという点について、個人的に意外に思えましたね。
まとめ
【小池一夫のキャラクター創造論】を読んだ感想ですが……微妙の一言です。 1000 円以上のお金を払って買うほどの価値は無いように感じました。自分が創作論を勉強しているから、新たな学びが少ないことも原因ですけれど。
キャラクター創造論というタイトルが付けられていますが、一からキャラクターを作る手順とか、キャラクター設定を固めるための質問シートとか、そういったことは一切 書かれていません。タイトル負けしている気がします。
著書の文章にしても、あまり重要ではないことについて多くの文章が使われているように見えて、どうしても水増しの官が否めません。《リドル》や《主謎技感》という目新しいキーワードが使われていますが、所詮は言い換えに過ぎません。馴染みのある日本語を外国語に翻訳されたような気分です。
キャラクター創作について勉強したい場合は、【小池一夫のキャラクター創造論】は、あまりオススメできませんね。新刊で買う価値は無いでしょう。
図書館で無料で借りられたり、中古書店で 300 円以下で売ったいたりするなら、読んでみてもいいでしょう。