どうも、ノマドクリエイターのショウヘイ( @shohei_creator )です。
人気の物語の構造の1つに『貴種流離譚』があります。
ざっくり説明すると『高貴な身分の主人公が身を堕として、苦労の果てに、再び高貴な地位を勝ち取る』という展開の物語です。
今回の記事では、貴種流離譚について詳しく解説しつつ、多くの人々から貴種流離譚が好まれる心理的理由を考察します。
貴種流離譚とは
貴種流離譚とは、国文学者・民俗学者の折口信夫が提唱した概念です。
物語の構成順は、
- 高貴な身分の主人公が
- 何かしらの原因によって身を堕とし
- 多くの苦労や試練を乗り越えた果てに
- 再び高貴な身分に返り咲く
というようになっています。
貴種流離譚の具体例
貴種流離譚の物語は、神話や民話、冒険物の一般書籍など、いつの時代でも見られます。
貴種流離譚の具体例として【アーサー王伝説】と【日本神話のスサノオ】、さらに現代ものとして【コードギアス 反逆のルルーシュ】を取り上げます。
貴種流離譚の物語:アーサー王伝説
貴種流離譚とアーサー王伝説の構成対応は、次の通りです。
- 高貴な身分の主人公が(主人公はアーサーは、ブリタニア王ウーサー・ペンドラゴンの略奪愛によって生まれた子)
- 何かしらの原因によって身を堕とし(アーサーは孤児として扱われ、ウーサー・ペンドラゴンの家来に引き取られる)
- 多くの苦労や試練を乗り越えた果てに(大聖堂前に岩上に突き刺さった剣を引き抜き、数々の戦争を勝ち抜いて)
- 再び高貴な身分に返り咲く(ブリタリア全土を平定して、王として即位する)
貴種流離譚の神話:日本神話のスサノオ
貴種流離譚とスサノオの対応は、次の通りです。
- 高貴な身分の主人公が(日本国を創ったイザナギから生まれたスサノオは)
- 何かしらの原因によって身を堕とし(アマテラスが天の岩戸に隠れてしまった責任を取らされて、高天原から追放されて)
- 多くの苦労や試練を乗り越えた果てに(出雲に降り立ったスサノオは、出雲で暴れていたヤマタノオロチを討ち取り)
- 再び高貴な身分に返り咲く(スサノオは英雄となり、やがて根の国を支配するようになる)
[caption id="attachment_4162" align="alignnone" width="402"] 画像引用元:八百万の神大図鑑|素戔男尊[/caption]
貴種流離譚のアニメ:コードギアス 反逆のルルーシュ
貴種流離譚と反逆のルルーシュの構成対応は、次の通りです。
- 高貴な身分の主人公が(主人公のルルーシュは、神聖ブリタニア帝国元第 11 皇子・第 17 皇位継承者であったが)
- 何かしらの原因によって身を堕とし(父親の外交戦略と戦争により、日本にある学園の生徒として、平凡な生活を送っていたが)
- 多くの苦労や試練を乗り越えた果てに(ブリタニア国に対するテロ集団に加担した後、自身を首領とするテロリスト集団『黒の騎士団』を作る。そして、ブリタニア王国軍に数々の戦争を仕掛けて、勝ち上がり)
- 再び高貴な身分に返り咲く(最終的に、ブリタニア皇帝・超合集国最高評議会議長・黒の騎士団 C.E.O. の地位を手に入れる)
[caption id="attachment_4163" align="alignnone" width="1280"] Ⓒ SUNRISE/PROJECT GEASS Character Design Ⓒ 2006 CLAMP ・ ST Ⓒ SUNRISE/PROJECT GEASS Character Design Ⓒ 2006-2008 CLAMP ・ ST Ⓒ BANDAI NAMCO Entertainment Inc. Ⓒ Sammy[/caption]
貴種流離譚が好まれる理由とは
貴種流異端が人々から好まれる理由は、なんでしょうか。
その理由について、いくつか考察してみます。
貴種流離譚には『欠落と回復』の要素がある
物語の王道的な要素の1つに『主人公が自身の欠落を回復する』というものがあります。
はじめ、主人公は何か欠落(身体的、心理的を問わず)を持っています。この欠落は、物理的・精神的を問わず、主人公にとって大切な物です。
この欠落を回復するために、主人公は、危険な冒険の旅に出かけます。
多くの試練を乗り越えて、主人公は財宝を獲得します。この財宝によって欠落が回復します。ただし、財宝を得る旅の過程で、欠落を回復することも多いです。
貴種流離譚は、上記の『主人公が自身の欠落を回復する』という要素を持っています。
貴い身分の主人公は、不幸な出来事により、幼いころに高貴な地位を失います(欠落)。
その後、多くの苦労を経験して、困難な試練を乗り越えて、結果的に高貴な地位に返り咲きます(回復)。
貴種流離譚は『欠落と回復』の要素を持っているので、読者から愛されやすいと考えられます。
貴族の主人公に自己投影して、読者は自己優越感と自己承認感を味わえる
貴種流離譚の主人公は、生まれながらの尊い存在です。王族・貴族の子どもとして、もしくは神として生まれつきます。
特別な存在である主人公に読者が自己投影することで、読者は自己優越感(自分が他者より優れている実感)と自己承認感(自分の存在を他者から認められている実感)を味わえます。
高貴な主人公が不幸になるので、読者は同情したくなる。もしくは、主人公に劣等感を感じた読者がスカッとする
高貴な生まれの主人公が不幸になると、話の前後で大きな落差が生まれます。
落ちぶれた主人公の姿を見て、読者は感情移入して同情してしまい、物語に引き込まれやすくなると考えられます。
もしくは、高い地位の人物(芸能人や政治家、またはその子ども)に対して劣等感を抱いている人にとって、高貴な主人公が落ちぶれる展開は、胸がスカッとするとも言えます。
どちらの理由にせよ、主人公の成り行きに強い興味を持つことは同じですね。
主人公の幸福度に大きな高低差が生まれるので、読者が楽しみやすい
海外の研究によると、人が好む物語の展開は、大きく分けて6つの型に分類できます。
人気物語の6つの型については、下の記事で詳しく説明しています。
6つの型のどれにも共通して言えることは、物語の展開に『上下の波』があることです。
ハッピーエンドであれバッドエンドであれ、それ以前の展開に大きな波があると、人々は喜んで物語を読もうとします。
貴種流離譚は、生まれながらに高貴な主人公が落ちぶれて、その後に高い地位に返り咲く物語です。
縦軸を幸福度、横軸を物語の展開としてグラフを描けば、綺麗な V 字曲線が描けます。
それなので、貴種流離譚は、人々から好まれやすいと考えられます。