どうも、ノマドクリエイターのショウヘイ( @shohei_creator )です。
ブログアシスタントのふーちゃんです。
小説家のような物語作家を目指すなら、誰しも新人賞を取りたいですよね?
新人賞を取れれば、書籍化は確実です。
作家として身を立てるにせよ、作品のアニメ化を目指すにせよ、まずは新人賞を取れなければ始まりません。
今回の記事では、ネットビジネスの実践で培ったビジネス思考に基づいて、小説・ライトノベル新人賞を取るための戦略を考えてみました。
小説やライトノベルの新人賞で受賞するためには、商品としての作品づくりに徹することが重要です。
自分が書きたい物語を書くのではなくて、読者が読みたい物語を提供することが基本です。
窮屈な印象を抱くかもしれませんが、プロとして生きるということは、私情を切り捨てて、営利を優先するということです。
厳しい意見ではありますが、しっかりと受け止めてください。
出版社にとって、小説・ライトノベルとは何か?
初めに理解しておくべきことは。『出版社にとって、小説・ライトノベルとは何か』ということです。
これを理解していないと、新人賞を開催する出版社に対して、的外れな作品を応募しかねません。
結論から言うと、出版社にとって、小説・ライトノベルは、会社に利益をもたらす商品です。
突き詰めれば、商品を販売して得られるお金を求めています。
「創作文化の発展」だの、「新人作家の発掘」だの、色々と建前は使うでしょうが……。
最終的に欲しい物は、小説・ライトノベルを販売して得られる企業利益です。
生々しい話ですが、これが出版社が新人賞を開催する目的です。
これが理解できていない作家志望は、出版社の新人賞に商品価値の無い紙束を送り付けて、出版社の選考委員から「あ、これ商品価値が無いわ。いらねっ」と捨てられます。
み、耳の痛くなる話です……。
出版社は、応募作品に「作者の個人的な思想や価値観」を求めていない
出版社が小説・ライトノベルに求めているものは、純粋な商品価値です。
商品価値の高い商品とは、市場(読者)の需要に的確に応えて、より多くの売り上げを得られるものです。
出版社としては、物語の世界観や登場人物たちのやり取りで、読者が楽しめれば、それで良いのです。
「物語を通して、私は世の中に●●を訴えたい!」というような、作り手側の思想・価値観なんて、出版社は求めていません。
「小説家・ラノベ作家は、読者を面白がらせる物語を製造してくれりゃいいんだよ!」
「作り手側の思想や高尚な願望なんか、知ったこっちゃねえ!」
「面白くて売れれば、それが小説・ライトノベルとしての正義だ!」
「売れない作品は、どんどん打ち切りだ! 出版社には、売れ筋商品しか要らねえ!
「打ち切り作家の生活苦? 知ったこっちゃねえな! 自分の食い扶持くらい、自分でなんとかしな!」
それが出版社の本音です。
ショウヘイさん、「オブラートに包む」って言葉、知っていますか?
小説・ライトノベル新人賞は、選考が進むごとに 60% ~ 90% の応募作品が振るい落とされる
各出版社のレーベルが主催する新人賞には、毎回、大量の応募作品が送られてきます。
出版社の内部にある文庫制作部署の名前。文庫のブランド名。
KADOKAWA であれば、レーベルは『富士見ファンタジア文庫・富士見 L 文庫・角川ビーンズ文庫・ MF 文庫 J ・電撃文庫・ファミ通文庫・ビーズログ文庫・角川スニーカー文庫・角川文庫』です。
たとえば、ライトノベル界の大手レーベルである電撃文庫の『電撃文庫小説大賞』には、 5000 弱もの応募作品が投稿されてきます。
受賞枠は 10 にも満たないので、倍率は 500 倍近くということになりますね。
応募段階から選考を重ねるごとに、かなりの数の作品が振るい落とされます。
第 25 回の電撃小説大賞では、総応募数 4843 作品のうち、一次選考で 510 作品まで絞られます。一次選考の段階で、約 90 %の応募作品が振るい落とされました。
続けて、二次選考で 213 作品まで絞られ(約 60 %の振るい落とし)、三次選考で 93 作品まで絞られ(約 60 %の振るい落とし)、最終選考で 10 作品まで絞り込みます(約 90 %の振るい落とし)。
上記の通り、選考が進むごとに、ゴリゴリと応募作品が振るい落とされています。
一次選考では、なんと 4000 作品も振るい落とされました。
小説・ライトノベル新人賞の「下読み」という関門
小説・ライトノベル新人賞の選考では、いきなりレーベル編集者が務めることはありません。
特に一次次選考は、下読みと呼ばれる人が務める場合が多いです。
フリー編集者や新人作家など『たくさん物語を読んでいて、物語の鑑識眼を持っている人物』です。出版社内の社員ではなく、業務委託された者です、
『応募規約を守っていない作品』や『小説としての体裁を保っていない作品』など、わざわざ出版社の編集者が選考するに値しない応募作品を徹底的に振るい落とすことが仕事です。
各レーベルが雇う下読みの人数は、人件費の都合で、それほど多くないと推測できます。
下読み1人が何十作もの応募作品を読むことになるでしょう。
長編小説だったら、最初から最後まで読もうと思ったら、3時間くらいかかりますよ。
それを数十件……ひぇぇ~!
1人で数十作の応募作品も担当するとなると、1つ1つの応募作品を最初から最後まで丁寧に読むとは思えません。
たとえ丁寧に読もうと心掛けていたとしても、退屈な応募作品を読み続けることは、かなりの苦痛を伴います。
下読みは、応募作品を適度に読み飛ばして、「これは没だな、次」と効率よく振るい落としていくと考えた方が自然ですね。
新人賞の受賞の第1関門は、いかに下読みさんに評価してもらえるかですね。
小説・ライトノベル新人賞の各選考段階の落選原因&突破方法
これから、一次選考・二次選考・三次選考に分けて、それぞれの選考で求められる応募作品の完成度を紹介します。
応募作品の何を下読みさんが見ているか、しっかりと把握しておきましょう。
小説・ライトノベル新人賞の一次選考の落選原因
小説・ライトノベル新人賞の一次選考では、応募作品の大半(電撃文庫なら約 90% )が振るい落とされます。
一次選考で振るい落とされる原因は、次の通りです。
- 応募要項の規約を守っていない
- レーベルの特色と一致していない
- 小説の体裁になっていない
- 文章が読みづらい
原因1:応募要項の規約を守っていない
小説・ライトノベル新人賞の応募要項には、さまざまな規定が書かれています。
規定に違反している作品は、問答無用で落選させられます。
編集部によっては、一次選考にすら回しません。応募原稿が届いたら、まずは通し番号を付けます。その時に中身を試し読みして、応募規定に違反しているようだったら、その場で没にします。
- 応募期限
- 募集ジャンル
- 枚数規定(原稿用紙換算で●●枚~▲▲枚など)
- 作者情報の添え書き
- あらすじの文字制限
- オリジナルの作品であること
- 差別表現、特定の個人:団体に対する誹謗中傷が含まれないこと
原因2:レーベルの特色と一致していない
レーベルには、レーベルが作り上げたいブランドイメージがあります。
ブランドイメージ固めには、長所の強化や他社差別化など、さまざまな企業戦略が含まれています。
レーベルのブランドイメージに合う応募作品は歓迎されますが、合わない応募作品は排除されます。ブランドイメージを損なうからです。
レーベルが求める作品の傾向は、応募受付ジャンルとして、応募要項に書かれています。
しかし、あくまでも大雑把な情報でしかありません。
応募したい新人賞の過去の受賞作を調べて、レーベルが求める作風を把握しておくことが大切ですね。
原因3:小説の体裁になっていない
小説の体裁になっていない応募作品は、落選させられます。
たとえば、最低限の文章作法を守れていない場合です。
段落の始めは1字下げる・文末に句点を置く・会話文は鉤カッコで挟むことは、小説として守るべきルールです。
数個の間違いなら、大丈夫です。受賞させる作品については、あとで作者に改稿させるからです。
しかし、最初から最後まで間違っていた場合、下読みは「こいつ、小説の書き方を知らないな」と判断します。
小説の書き方の基本ルールについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
別の場合は、小説として通用する構成になっていないことです。
- 展開が急すぎて、読者が納得できない(なんの前触れもなく、いきなり主人公の能力が覚醒するなど)
- 誰が何を発言をしたのか分からない
- ただの日記(どこで何が起きたのかという事実が書き連ねられているだけで、登場人物の対立や成長が描かれていない)
原因4:文章が読みづらい
文章が読みづらい場合は、振るい落としの原因となります。
小説としての体裁が整っていないからです。
- そもそも、日本語になっていない。
- 一文が長すぎる。
- 主語と述語の対応が滅茶苦茶。
- 修飾語と被修飾語の対応が分かりづらい。
- 読点が少なく、意味の切れ目が分かりづらい。
- 非常用の難読漢字が多すぎる。
- 誤字脱字衍字が多すぎる。
- ことわざや慣用句の使い方を間違っている。
- 頻繁に人称視点が切り替わる。
- 特殊な読み方の固有名詞・技名が多すぎる(ルビの使い過ぎ)。
別の問題として、下読みに多大なストレスを与えてしまうので、心理面でも評価が悪くなります。
読みづらい文章は、読んでいるだけでストレスになります。また、本編の内容を理解しづらいので、なおさらストレスが積み重なります。
審査しなければいけない応募作品が多いにもかかわらず、自由に使える時間は限られています。その状況において、読みづらい文章の応募作品は、下読みにとって多大なストレス源となります。
人間の心理として、そんな応募作品に、わざわざ時間を使う価値は感じないでしょう。
小説・ライトノベル新人賞の一次選考を突破する方法
小説・ライトノベル新人賞の一次選考は、『応募要項の規定を守っていない応募作品』や『小説の体裁になっていない応募作品』を振るい落とすためにあります。
きちんと応募規定を守り、レーベルの特色を把握して、適切な文章作法を身につければ、一次選考を通過できる可能性は高くなりますね!
小説の文章作法については、こちらの記事にまとめています。
まずは、小説の書き方を基本から身につけましょう。
小説・ライトノベル新人賞の二次選考の落選原因
小説・ライトノベル新人賞の二次選考からは、レーベル編集者が選考を務めるようになることが多いです。
下読みから回されてきた応募作品を読んで、自分が推したい応募作品を選ぶわけですね。
二次選考は、娯楽物としての価値……つまり商品価値が重視されます。
一言でいえば、面白いかどうかです。
二次選考で振るい落とされる原因は、次の通りです。
- 展開に起伏が乏しくて面白くない
- 登場人物に共感・感情移入できない
- 主人公が活躍しない
- 既存作品の二番煎じ
原因1:展開に起伏が乏しくて面白くない
面白い小説・ライトノベルには、必ず事件が起きます。
事件に直面した登場人物(特に主人公)は、最初は戸惑います。しかし、意志を固めて攻勢に移ることで、問題を解決します。
また、問題解決の過程で、多くの登場人物が現れて、互いに影響を与え合います。敵と味方に分かれて、対立構造を作ります。
ここで生まれる人間ドラマこそ、小説・ライトノベルの面白さの1つです。
何も事件が起こらない日常譚は、物語の起伏に乏しくなります。
主人公は、問題解決のために行動しません。闘うこともなければ、人間的な成長を遂げることもありません。
登場人物の間には、明確な対立構造が生まれません。
物語が大きく変化する出来事が無ければ、二次選考で落選させられてしまいます。
原因2:登場人物に共感・感情移入できない
小説・ライトノベルを楽しめる条件の1つは、登場人物に共感できて、感情移入できることです。
読者が登場人物に感情移入できていれば、読者の心は登場人物と一体化します。
登場人物が試練を乗り越えれば、読者も喜びます。登場人物が危険に直面すれば、読者も不安と恐怖に襲われます。
読者が登場人物に感情移入できなければ、登場人物の状況は、読者にとって対岸の火事です。
登場人物が絶望しても、読者は何も感じません。
感情移入するためには、読者が登場人物に共感できて、身近な存在に感じてもらう必要があります。
性別が同じである、年齢が近い、社会的立場が同じ、似た悩みを抱えている、夢や目標が一緒……という場合に、読者は登場人物に共感できます。
登場人物が欠点を持っていたり、意外な一面を見せたりした時も、読者は登場人物に親近感を抱きますよ。
登場人物に共感・感情移入できてこそ、読者は小説・ライトノベルを楽しめます。
原因3:主人公が活躍しない
主人公が活躍しない小説・ライトノベルは、それだけで落選対象になります。
読者が最も感情移入する対象は、主人公です。
主人公は読者の分身であり、読者は主人公の体験を疑似体験します。
小説・ライトノベルで主人公が活躍しなければ、読者は主人公を通して、勝利の快感や周囲の称賛を擬似体験できません。
小説・ライトノベルでは、主人公が活躍することが鉄則です。悪役(敵キャラ)のボスと戦うような佳境では、必ず活躍させます。
ヒロインや強力な脇役に、悪役(敵キャラ)のボスを倒させてはいけません。
主人公が非力な存在であれば、少なくとも決定打を作り出す手助けをおこなわせるべきです。
原因4:既存作品の二番煎じ
書籍化やアニメ化をキッカケにして、特定の作品が広く知れ渡ると、模倣作品が次々と応募されるようになります。
いわゆる、二番煎じです。
既存作品の二番煎じとなる応募作品は、落選対象となります。
先行作品(模倣先)と比べると、どうしても売り上げが落ちるので、わざわざ費用をかけてまで書籍化する価値が無いからです。
ビジネスの世界では、後発商品は、先行商品に勝てないことが常です。
よほど宣伝に力を入れるか、もしくは先行商品を超える大きな魅力が無い限りは、後発商品では勝てません。
この理由は、認知度の差と二番煎じの汚名が関係しています。
先行商品は、認知度で優っています。先に世に出たので、当然ですね。
先行商品と後発商品が同じ棚に並んでいたら、消費者の心理としては、先に知っていて馴染みのある先行商品を選びたくなります。
認知度の差(それに伴う消費者選考)を覆すためには、多大な広告費を投入して、後発商品を何度も知らしめる必要があります。
また、二番煎じという事実は、それだけで後発商品の印象を悪くします。
この世界には、開発者の名誉と利益を守る特許制度が浸透しています。特許制度の存在は、一般人でも知っています。
つまり、一般人には、『二番煎じは、アイデアを盗んで作った模造品』という認識が根付いています。
小説・ライトノベル新人賞を開催する出版社の立場としては、商品化する価値の薄い二番煎じ作品を受賞させる理由はありません。
小説・ライトノベル新人賞の二次選考を突破する方法
小説・ライトノベル新人賞の二次選考では、物語として面白いかどうかを問われます。
展開に波が生まれるようにプロットを作って、共感しやすい登場人物を作り、必ず主人公を大活躍させましょう!
小説のプロットの書き方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
小説のキャラクターの設定の作り方と小説の主人公設定の作り方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
小説・ライトノベル新人賞の三次予選について
小説・ライトノベル新人賞の三次選考では、編集者が集まって、各々が推薦したい応募作品を発表し合います。
そして、最終選考を務める選考委員に回す応募作品を厳選します。
小説・ライトノベル新人賞の三次選考では、特にオリジナリティ(独創性)を重視します。
小説・ライトノベルにオリジナリティ(独創性)が強ければ、既存の類似作品と充分に差別化できます。商品販売の面で、とても有利です。
オリジナリティ(独創性)が高いと認められるためには、世界観・登場人物・物語構成・テーマ・コンセプトの最低1つに、既存作品と違う何かが含まれている必要があります。
また、作品全体のバランスも重視されます。
たとえば、世界観に矛盾が無いか・主人公が読者に嫌われないか(感情移入しやすいか)・物語の展開順序は適切か・展開が中だるみしないか・コンセプトに興味をそそられるか・物語にテーマが一貫しているか……といったものです。
小説・ライトノベル新人賞の最終選考について
小説・ライトノベル新人賞の最終選考では、選考委員(プロ作家・編集者・評論家など)によって審査されます。
最終選考では、『レーベルから出版するほど商品価値の高い作品なのか』が重視されますよ。
応募作品を新人賞に受賞させるということは、賞金の支払いを始めとして、出版準備から初版発行まで、莫大な経費がかかります。
それらの経費を回収して、さらに大きな利益を出版社にもたらす見込みが無ければ、わざわざ受賞させる必要はありません。
三次選考以上に、小説・ライトノベルとしての総合力が求められますよ!
小説・ライトノベル新人賞の応募作品の書き方
小説・ライトノベル新人賞の選考委員が応募作品を審査するうえで、特に見ているであろう要素を紹介していきます。
一次~三次選考で触れた要素についても、あらためて触れ直しますね。
小説・ライトノベルのテーマの決め方
小説・ライトノベルにおいて、テーマは重要と言われます。
テーマ自体が曖昧な表現ですが、一言で表すなら、読者の心に訴えかける問いです。
ただし、心に訴えかける問いと言っても、高尚で説教じみたことではありません。また、問いの形式に こだわる必要もありません。
『可愛い女の子友達と部活で盛り上がる楽しさを伝える』でも『ほのぼのとした異世界冒険の心地よさを伝える』でも OK です。
わざわざテーマを重視する理由は、テーマが物語展開の軸となり、やがて作品のブランドになるからです。
たとえば、平坂読氏の【僕は友達が少ない】は、恐らく『可愛い女の子友達と部活で盛り上がる楽しさを伝える』がテーマです。
【僕は友達が少ない】の構成は、必ず『女の子友達』と『部活』と『楽しく遊ぶ』という要素が深く関わります。続刊を出した時も、このことは変わりません。
すると、読者は『【僕は友達が少ない】は、可愛い女の子と部活で楽しく遊ぶ物語』という印象を深めます。
つまり、【僕は友達が少ない】に、『可愛い女の子と部活で楽しく遊ぶ』というブランドが出来上がるわけです。
いったんブランドが確立されると、読者の中で『可愛い女の子と部活で楽しく遊ぶ → 僕は友達が少ない』と関連付けされます。
そして、読者が「美少女と仲良くできる学園ものの小説が読みたい」と思った時に、【僕は友達が少ない】が思い出されて、購買行動を起こすようになります。
以上のブランド論は、一般企業が必死に取り組んでいるブランドマーケティングと一緒です。ブランド競争を制すれば、商品は売れやすくなります。
小説・ライトノベルも商品なので、ブランド競争を制すれば、その作品が売れやすくなります。
もしも、小説・ライトノベルのテーマが不確かであったり、作品を通して一貫したテーマが無かったりするならば、確固たるブランドが生まれません。
ブランドが弱いと読者の印象に残りにくくなり、ブランド競争で勝てなくなります。
だからこそ、小説・ライトノベル新人賞の選考委員は、テーマを重視すると考えられます。
小説のテーマの見つけ方 & 決め方は、こちらの記事で詳しく説明しています。参考にしてください。
小説・ライトノベルのコンセプトの決め方
小説・ライトノベルのコンセプトは、物語の題材になりそうな面白いアイデアを物語のあらすじの基礎として使えるように発展させたものです。
コンセプトは、「もし~だったら?」という形式で表せます。
この問いかけの答えこそ、物語の内容であり、登場人物が見せてくれる言動や人間的成長です。
小説・ライトノベルのコンセプトは、あらすじの原型となります。
コンセプトを見るだけで、大まかな物語展開が予測できるからです。
たとえば、【ハリー・ポッターと賢者の石】のコンセプトは、おそらく次のようなものです。
もしも、両親を悪の魔法使いに殺された少年が、魔法を学べる学校へ招かれたら?
しかも、その学校で、悪の魔法使い(と、その手下)に遭遇して、陰謀を阻止するために戦うとしたら?
上記のコンセプトを見るだけでも、以下のあらすじを予想できます。
- 主人公の魔法使いの少年は、魔法学校に入学する。
- 魔法学校では、同年代の子供と一緒に、西洋ファンタジーに登場する魔法や薬物を学んで、学校生活を楽しむ。
- やがて、魔法学校内の敷地内で両親の仇である魔法使いと遭遇して、因縁の対決を果たす。
コンセプトはあらすじの基礎であり、あらすじは物語の基礎です。
コンセプトが目新しくて意外性に満ちていたり、人々が思わず知りたくなるような謎が潜んでいたりするならば、コンセプトを具体化した物語が魅力的になる確率は、きわめて高いです。
「コンセプトの出来は、物語の出来を左右する」と言っても、過言ではありませんよ!
小説のコンセプトの考え方 & 作り方については、こちらの記事で詳しく説明しています。参考にしてください。
小説・ライトノベルの世界観の作り方
小説・ライトノベルの世界観は、時代・文化・常識・物理法則・地形・気候・政治・宗教・経済・産業などの多様な要素が総合的に積み重なって築かれます。
すごく簡単に言えば、世界観とは、物語全体に漂っている雰囲気です。
小説・ライトノベルの世界観で重視される点は、整合性と意外性です。
整合性とは、物語の設定に矛盾が無い度合いです。
たとえば、とある物語では、森林や洞窟に魔物が生息しています。魔物たちは凶暴で、人間を食料にすることもあるので、たびたび村や都市を襲います。
『周囲の自然環境に魔物が生息しており、魔物に殺される人間が後を絶たない』という環境であれば、村や都市の周囲に外壁や堀が設置されていて当然です。
もしも、魔物が登場する世界でありながら、村や都市に防備施設が存在しなければ……それは施錠できない金庫に貴重品を保管するようなものです。この小説・ライトノベルを読んだ読者は、強い違和感を覚えるでしょう。
魔物の襲来に備えて、人の住処に外壁や堀が張られているならば、とても自然です。歯車が互いにカッチリと噛み合うように、設定同士が連結しています。
このように、設定に矛盾が無いことを『整合性がある』と言います。
意外性とは、現実に有り得ないような面白味に満ちている度合いです。
たとえば、筒井康隆氏の長編小説【虚航船団】は、登場人物が文房具です。それだけでも意外なのに、舞台が宇宙と惑星という壮大さ。しかも、敵はイタチ。
文房具たちは、司令艦から「イタチを殲滅せよ」と命令を受けて、イタチに戦争を仕掛けます。
物語終盤では、なぜか文房具とイタチの混血児が登場します。どうやって交配したんですかね?
そんな感じで、【虚航船団】の世界観は、意外性にあふれています。世界観が意外だったら、それだけで試し読みしたくなりますよね。
だからこそ、世界観における意外性は重視されます。
小説の世界観の作り方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
世界観作りに役立つ質問リストも掲載してるので、活用してください。
小説・ライトノベルのオリジナリティ(独創性)の作り方
小説・ライトノベルのオリジナリティ(独創性)は、新人賞の選考で最も重視される点でしょう。
オリジナリティ(独創性)が重要視される理由は、2つあります。
1つ目は、芸術品に二番煎じは要らないということです。
芸術品は、見ても触っても無くなりません。食べ物や洗剤のように、定期的に補充する必要もありません。1度でも創ってしまえば、壊されない限りは、ずっと存続します。
だからこそ、芸術に二番煎じは要りません。もちろん、模造品も要りません。最初の1つで十二分です。
今までに見られない独創性こそ、術品の価値です。
2つ目の理由は、商品価値の問題です。
下読みの振るい落とし原因で言及したように、二番煎じであることは、それだけで価値が下がります。基本的には、先行商品に勝てません。
たとえ費用をかけて制作して、宣伝したとしても、大きな利益額は見込めません。だから、わざわざ制作する理由が無いのです。
二番煎じの商品は、大量生産して薄利多売する。
これくらいしか利用価値はありません。
小説やライトノベルの場合は、小説投稿サイトにて、大量の二番煎じの作品が投稿され続けています。
薄利多売どころか、すべて無料公開です。
出版社が薄利多売戦略に乗り出すことは、まずありえません。
小説にオリジナリティ(独創性)を出す方法については、こちらの記事で詳しく説明しています。
また、小説のアイデアの作り方&着想ネタを集める方法については、こちらの記事で詳しく説明しています。あわせて読んでみてください。
小説・ライトノベルのプロットの書き方
小説・ライトノベルの面白さは、ドラマとしての面白さです。
- どんな場所を舞台にして、いかなる問題が発生するか。
- 問題に対して、登場人物はどう反応して、行動するか。
- 登場人物が関わり合うことで、どんな協力と対立の関係が生まれるか。
- 問題を解決すべく、舞台で大立ち回りを演じる主人公の活躍。
- 問題解決を通して、主人公は何を得られるか。
- 物語の終盤にて、主人公は、どれほど人間としての成長を遂げるのか。
プロットの構成の上手さとは、結局のところ、『読者をどれだけ強く登場人物に感情移入させて、退屈させずに展開を楽しませるられるか』に尽きますね。
小説のプロットの書き方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
長編小説を書く場合は、三幕構成が便利ですね。
小説・ライトノベルのキャラクター設定の作り方
小説・ライトノベルのキャラクター設定で重視される点は、人物としての強い個性です。
現実と同じように、個性の感じられない人物には、キャラクターとしての魅力がありません。
主要人物である主人公とヒロインには、さらに『感情移入しやすいか』と『行動を起こすだけの強い動機や信念』が求められますよ。
キャラクター創作論については、かなり複雑な内容となるので、説明は個別記事に任せるとしましょう。
小説のキャラクター設定の作り方については、こちらの記事参考にしてください。
主要人物である主人公とヒロインについては、小説の主人公設定の作り方と小説のヒロイン設定の作り方を参考にしてくださいね。
余裕があれば、小説の悪役(敵キャラ)設定の作り方にも、目を通してみてくださいね。
小説・ライトノベルのあらすじの書き方
小説・ライトノベル新人賞に送るあらすじ(梗概とも)は、一般書籍の背表紙に書いてあるようなあらすじとは異なります。
新人賞に送るあらすじは、応募原稿の筋書きを最初から最後まで説明したものです。ネタバレなど関係なく、重要な情報はキッチリと書いてください。
応募原稿とは別にあらすじの添付が求められる理由は、下読みや選考委員の選考作業を楽にするためです。
物語の筋書きを簡潔に書き表したあらすじがあれば、応募原稿の本編内容を短時間で把握できます。また、次の選考に進める応募作品を決める時に、どんな内容の物語だったのか思い出す時に、あらすじが役に立ちます。
小説・ライトノベル新人賞で提出を求められるあらすじには、文字数に制限が設けられています。
具体的な文字数については、各新人賞の応募要項に記載されています。大半の場合は、 800 文字以下または 1000 文字以下ですね。
実際にあらすじを書く時は、物語における重要な場面のみを抜き出します。それらを時系列に並べた後に、場面の前後がつながるように文章で補足してください。
物語の展開に重要ではない場面は、徹底的に除去してください。贅肉を削ぎ落とすどころか、筋肉まで削ぎ落として、骨だけ残すくらいのつもりでやりましょう。そうでなければ、どうしても文字数制限を超過してしまいます。
小説のあらすじの書き方については、こちらの記事で詳しく説明してます。
小説・ライトノベル新人賞は、レーベルの需要に応えるべし
出版社のレーベルには、レーベルが築き上げようとしているブランドイメージがあります。
企業が競合他社と闘って生き残るためには、自社の強みを活かせるブランドイメージを押し出して、他社と差別化を図る必要があります。
他社と差別化できれば、それを軸にして商品開発・宣伝告知・商品展開することで、より優位な立場で企業運営できるからです。
レーベルのブランドイメージの大部分は、出版する小説・ライトノベルの内容によって決まります。
レーベルのブランドイメージを強化する小説・ライトノベルは歓迎されます。反対に、ブランドイメージを損なう作品は拒絶されます。
レーベルが求める作風は、第一に応募要項の募集内容(長短編・ジャンルなど)で分かります。
第二に、過去に受賞した作品の傾向から読み取れます。受賞作品は、出版社が求めている作品の合格例だからです。
新人賞を取るためにも、レーベルが求めている作風を汲み取ってあげて、その作風に沿った応募作品を作るようにしましょう!
小説・ライトノベル新人賞の「傾向と対策」に潜む罠
小説・ライトノベル新人賞で受賞するためには、応募する新人賞の傾向と対策を調べることが重要視されています。
ただし、傾向と対策を学ぶことには、とある罠が潜んでいます。
傾向と対策を重視すぎて、過去の受賞作品の模造品を作ってしまうことです。
何度も説明しているように、小説・ライトノベル新人賞では、応募作品の独自性が求められます。
小説・ライトノベルが商品である以上、二番煎じの商品は要りません。
また、同じ作風の作家(商品の製造者)は、レーベルに2人も要りません。1人だけで充分です。
もちろん、傾向と対策を学ぶことは大切です。
レーベルの求める作風に合わなければ、応募作品を落選させられてしまいます。
傾向と対策を学ぶ目的は、あくまでもレーベルが求める作風の方向性を把握しておくためです。
作風の方向性を把握したら、いかにして独自性を加えて、過去の受賞作と差別化を図るか……これが重要になります。
レーベルの求める作風に合っていて、しかも過去作に見られない独自性もある。
こんな作品を新人賞に応募すれば、受賞は目の前ですね。
小説・ライトノベル新人賞に受賞したいなら、読者にカタルシスを与えることを追求せよ
読者が日常から離れて、わざわざ空想の物語を読む理由は何か。
それは、物語の登場人物を通して、日常で満たせなかった願望を擬似的に叶える為です。
創作業界では、『読者が心の中に溜めこんでいる欲求を解放して、胸がスッとする清々しい快感を得られること』をカタルシスと呼んでいます。
カタルシスは、言わば読者の需要です。
消費者の需要を的確に満たせる商品があったら、爆発的に売れる人気商品となります。
同じように、より強烈で、より多くのカタルシスを読者に与えられる物語は、爆発的な人気作となります。
小説のカタルシスについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
昨今では、異世界転生・異世界召喚や最強主人公の無双劇が人気を集めています。
この理由は、近頃の読者が抱えている『日常で満たされない願望』を擬似的に叶えて、カタルシスを得られる物語だからです。
どうして、その手の設定が流行るようになったんですかね?
以前からファンタジー系には根強い人気がありましたが、いわゆるハイファンタジーや現代ファンタジーと呼ばれる部類でしたよね。
必死にならなくても程々に生きられるようになった分だけ、生きがいを失っているからじゃないかな。
現実で成功するためには、それ相応の熱意と努力が必要になる。
でも、その手の設定を好む人は、自分が熱意を傾けられる対象を持っていなし、努力することも大嫌い。
……となると、現実ではない世界を舞台にして、転生・召喚ボーナスで楽して何かを成し遂げられることが理想になるんじゃない?
仮にそのとおりだとしたら……なんだか中途半端な現実逃避ですね。
『会社で仕事に打ち込んで昇進する』という発想は、もう古すぎる。そして、会社で頑張っても報われないことは、みんな気づいている。
だからといって、自分で起業するほどの情熱や信念は、持っていない。起業で成功する道筋は分からないし、試行錯誤して正解を見つけ出す努力を払いたくない。
そりゃ、異世界転生や異世界召喚に憧れるだろうさ。
小説・ライトノベルの読者像を明確にせよ
小説・ライトノベルの読者に効率よくカタルシスを与えるためには、その読者のことをよく知っておく必要があります。
想定する読者像が明確になればなるほど、その読者が抱えている現実に対する不満感が推測しやすくなります。
ビジネス用語では、理想の見込み客を象徴する架空人物のことをペルソナと呼びます。
年齢・性別・趣味・社会階級・口癖・1日の過ごし方・交友関係・夢や目標・日常に対する悩みや不満……といったことを決めることで、理想の想定読者(ペルソナ)を作れます。
最も正確に定読者の需要を読み取る方法は、想定読者と全く同じ生活を送ってみることです。
1日の行動に始まり、趣味や口癖を真似てみることで、実体験から想定読者の感性に共感できるようになります。
20 代の作家の方がライトノベルを書きやすいと言われている理由は、作者自身が若いからこそ、高校生のような若い読者の感性を理解しやすいからなんでしょうね。
想定読者の不満表を作成して、不満を解消できる要素を取り入れる
想定読者の不満表とは、『読者が現実の日常に対して抱いている不満の一覧表』のことです。
繰り返し伝えますが、読者が空想の物語に触れようとする理由は、現実の日常生活で満たせなかった願望を擬似的に叶える(カタルシスを得る)ためです。
想定読者が日常に抱いている不満の内容が明確に分かれば、それを解消する物語の設定を思いつきやすくなります。
読者にカタルシスを与えられるほど、商品価値の高い小説・ライトノベルになります。
どのように想定読者さんの不満を調べるかについては、作者側が推測するしかありません。
日常に対して抱く不満は、想定読者自身も明確に把握していないふわふわした虚しさです。
明確な答えは、想定読者さんにも書けません。
想定読者の人物像を明確にしておくことで、どんな不満を日常に対して持っているのか、推測しやすくなる利点もあります。
不満表の作成のためにも、想定読者の人物像を固めておきましょう。
主人公の人物像は「想定読者の自己投影しやすさ」を重視する
小説・ライトノベルの読者に強烈なカタルシスを与える条件の1つは、自己投影のしやすさです。
カタルシスは、物語の登場人物を通して『読者が物語の出来事を擬似体験する』ことによって得られます。
擬似体験の濃度は、登場人物に対する読者の自己投影の強さで変わります。
登場人物(特に主人公)に共感できる要素が多く、自己投影しやすいほど、読者は強烈なカタルシスを味わいやすくなります。
読者が登場人物に自己投影しやすくなるには、『登場人物の人物像』と『想定読者の人物像』を近づけることが大切です。
中学生・高校生・大学生の読者層が多い作品(例:ライトノベル)は、主要な登場人物が学生(特に高校生)であることが大半です。
この理由は、中~大学生にとって、学生である主要登場人物に共感・親しみを覚えやすくて、自己投影しやすいからです。
小説・ライトノベルのテーマ&コンセプト候補は、 10 個以上を目指して作れ
小説・ライトノベル新人賞で受賞できるような物語を作りたかったら、第一に『読者受けするテーマやコンセプトを採用する』ことが鉄則です。
売れない商品案を元にして、実際に商品を作っても、商品は売れません。当たり前のことですよね。
小説・ライトノベルの読者に受けないテーマやコンセプトを元にして、プロットを組んで、実際に物語を作っても、高確率で駄作になります。
小説・ライトノベル新人賞で受賞したかったら、まずはテーマやコンセプトの段階から、『読者に受けるかどうか』を吟味してください。
テーマ・コンセプト候補は、 10 個を目指して考案しましょう。その中から、最も読者受けしそうなものを選んでください。
テーマ・コンセプトが選べたら、次にプロットを考えます。
プロットについても、候補を多く出して、最も読者受けしそうなものを選んでください。
テーマ・コンセプト・プロットの吟味で、制作時間の9割を使う心持ちでいましょう。
小説・ライトノベルの質は、テーマ・コンセプト・プロットで決まります。
小説・ライトノベルの構成は、人気作から真似るべし
小説・ライトノベルの構成(どんな世界観・どんな舞台・どんな登場人物)を組み始める時は、すでに人気になっている作品を真似ることをオススメします。
結果には、必ず原因があります。人気作としてヒットする作品には、人気になる原因があります。
人気の原因を調べ明かして、自分の小説・ライトノベルの構成に組み込むことこそ、新たな人気作を作る近道です。
言い換えれば、王道を行けということですね。
王道を進みつつ、陳腐化を回避する
王道化は、陳腐化と隣り合わせです。
ありきたりで、面白味や新鮮味のないこと。
王道要素を詰め込んでばかりいると、「あれ、なんかどっかで見たような物語だな」と思われてしまう、ありきたりな小説・ライトノベルになります。
陳腐化した物語の具体例は、無料投稿サイトに無数に転がっています。
- 不慮の事故で死んだら、異世界に転生した
- ゲームを遊びつつ寝落ちしたら、異世界に転送(召喚)された
- 幸運(神の加護など)に恵まれ、超人的な能力値や資産を得て、無双する
- 異能が普及した学園で、主人公が大活躍して、なんだかんだハーレム化
差別化を図らず、流行ばかり追っていると、陳腐な作品になりがちです。みながみな、同じことをやり始めるからです。
ビジネスの世界では、流行を後追いする商品は、低価値の量産品として扱われます。商品自体に、オリジナリティ(独創性)・希少性が無いからです。
たとえるなら、ダイソーのような 100 円均一店で売られる模造商品ですね。
作品の陳腐化を回避するには、これまでの王道作品とは明らかに違う要素を導入して、既存作品と差別化を図る必要があります。
差別化に導入される要素は、以下の2つが代表的です。
- 作者が人生経験で身につけた強み(専門的な知識など)
- 常識と反する意外な設定
専門知識による物語の差別化
素人が2~3日で調べた程度では扱いきれない専門的な知識を組み込んだ物語は、とても希少性が高いです。
ごく普通の一般人が応募する新人賞であれば、物語の設定が似通った応募作品は、ゼロに近くなります。
具体例は、刃牙です。
刃牙には、古代から現代に至るまでの多種多様な格闘術が、これでもかと言わんばかりに盛り込まれています。
生半可な格闘技オタクでは、あれほど広範かつ深い格闘知識を集めることは出来ません。
意外な設定による物語の差別化
意外な設定とは、たとえば『現実世界の常識とかけ離れている』や『物語の世界観・舞台設定に逆らう』ということです。
いくつか具体例を挙げていきます。
1つ目の具体例は、幼女戦記です。
幼女戦記は、エリートサラリーマンが幼き少女ターニャ・デグレチャフとして異世界に転生して、戦場で活躍する物語です。
現実世界の常識では、戦場は『大人の男性』が武器を持って戦う場所です。
女性であり、かつ非力な幼女の主人公が戦場を駆って活躍する光景は、常識外れで意外性に富んでいます。
次の具体例は、とある魔術の禁書目録です。
この物語では、舞台となる学園都市では、当たり前のように超能力が使われています。また、学園都市外部の『宗教要素の強い地域・国』では、魔術が当たり前に使われます。
主人公の上条当麻は『超能力・魔術の両方を無効化する特異能力』を右手に宿しています。
超能力・魔術が飛び交う世界において、それらを無効化する上条当麻の存在は、真っ向から世界観に逆らう意外な存在です。
もう1つの具体例は、 IS (インフィニット・ストラトス)です。
IS の物語では、女性のみが扱える世界最強兵器『インフィニット・ストラトス』が登場します。
しかし、男主人公の織斑一夏は、なぜかインフィニット・ストラトスを扱えてしまいます。結果、インフィニット・ストラトスを使える世界で唯一の男として、女子学生ばかりの育成学校に入学させられます。
織斑一夏は、インフィニット・ストラトスの設定に逆らう意外な存在です。
面白いと思われる物語構成の特徴
人気作を分析すると、人々から面白いと思われる物語構成には、何かしら共通点があります。
以下の4記事は、物語構成を考える時に参考となるでしょう。
小説タイトルで、下読み・選考委員の興味を引く
小説・ライトノベル新人賞で受賞するためには、小説タイトルで下読み・編集者・選考委員の興味を引くことも重要になります。
下読みにしても編集者にしても、短期間で大量の応募作品を読み通します。その分だけ、1つ1つの応募作品の印象は薄くなりがちです。
しかし、小説タイトルで魅力的で印象深ければ、「どんな内容なんだろう?」と好奇心を引かれて、自ら進んで読もうとします。当然、印象に残りやすくなります。
また、どの応募作品を次の選考段階へ進ませようか選ぶ時に、小説タイトルの印象が深ければ、それだけ意識に引っかかりやすくなります。選ばれる可能性は高まるわけです。
たとえ応募作品であっても、興味深い小説タイトルを付けることは、小説・ライトノベル新人賞で受賞するうえで有利と言えます。
小説タイトルの付け方・決め方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
小説・ライトノベル冒頭の書き出しで、下読み・選考委員の興味を引く
小説・ライトノベル新人賞において、応募作品が面白いかどうかを判断する主な要素は、冒頭の書き出しで興味を引かれることです。
冒頭の書き出しで興味を引かれたら、読者は「お、この作品は面白そうだ。ちょっと続きを読んでみよう」と思って、ページをめくってくれます。
反対に、冒頭の書き出しで興味を引かれなかったら、読者は「つまらなそうだな。どうせ、続きも退屈なんだろうな」と思って、つまらない作品という先入観を持ちます。
心理学では、人物に対して最初に抱いた印象が偏見となって、のちの人物評価にも影響が及ぶようになる人間心理を初頭効果と呼びます。
最初に『面白い』と思われれば、その後も『この作品は面白い』という偏見を通して、作品を読んでもらえます。
もちろん、最初に『つまらない』と思われれば、その後も『この作品は つまらない』という偏見を通して、作品を読まれてしまいます。
その小説・ライトノベルの印象が決まる冒頭の書き出しは、新人賞で受賞するうえで、とても大切です。
小説の冒頭の面白い書き出しの書き方については、こちらの記事で説明しています。参考にしてください。
小説・ライトノベル新人賞のよくある質問 & タブー
小説・ライトノベル新人賞の応募について、よくある質問と回答をまとめました。あわせて、やってはいけないタブー行為も載せておきます。
何事も例外はあります。
念のため、新人賞の応募要項を確認することをオススメします。
ちなみに、新人賞で一次選考落ちしてしまう人がやりがちな失敗については、小説・ライトノベル新人賞で一次選考落ちの原因になるタブーという記事にまとめています。
小説・ライトノベル新人賞では、過去の応募作品の使いまわしは大丈夫?
この質問の意図は、主に次の2通りでしょう。
- とある新人賞に応募して落選した作品を改良したので、また同じ出版社の新人賞に改良版を応募したい。
- とある新人賞に応募して落選した作品を別の出版社の新人賞に応募したい。
1番目については、問題ありません。ただし、オススメは出来ません。
二次選考、三次選考まで進んで落選したような応募作品の場合は、作品の内容が『出版社が求める作風に合っていない』ことが考えられます。
物語の基盤である世界観を変えない限りは、作品の根本の作風まで変えられません。別の出版社の新人賞に応募しましょう。そちらの方が、受賞できる可能性は高くなります。
2番目についても、問題ありません。
とある新人賞で落選した作品を『別の出版社の新人賞』に応募する人は、いくらでもいます。大半の新人賞の応募要項でも、応募作品の使いまわしは禁じられていません。
特定の出版社で断られても、別の出版社から書籍化された作品の実例はあります(ブギーポップは笑わない、など)。
自信を持って、別の出版社の新人賞に応募しましょう。
複数の小説・ライトノベル新人賞に、同じ作品を応募しても大丈夫? (二重応募・二重投稿の是非)
原則、二重応募・二重投稿は禁止されています。
そもそも、出版社が多大な経費と賞金を払って新人賞を開催する理由は、優れた商品案と商品生産者を発掘するためです。
受賞枠に認めた応募作品の作者が
「実は、別の出版社の新人賞でも、受賞が確定しています。そちらの出版社の方で書籍化したいので、あなたの出版社から書籍化できません」
と言ってきたら、断られた出版社は、たまったものではありません。
もちろん、書籍化できないなら、受賞金なんて払えません。
あくまでも、二重応募・二重投稿が禁止されているだけなので、作品の使いまわしは問題ありません。
小説・ライトノベル新人賞には、 Web 上で公開している作品を応募しても大丈夫?
原則は、『作品として応募する場合は、 Web 上で公開している作品を非公開にする』ことが求められています。
Web 上で公開している作品とは、個人ブログや小説投稿サイト(例:小説家になろう)で公開している作品のことを意味します。
応募作品の非公開が求められることには、2つの理由があります。
1つ目は、第3者の公開作品を無断で複製した応募作品(コピーコンテンツ)を受賞させないためです。
出版社側では『 Web 作品の作者』と『応募作品の投稿者』が同一人物かどうか、すぐに確認できません。
2つ目の理由は、作品が受賞した場合は書籍化(商品化)するので、同一作品(または大本の作品)を無料公開されていては困るからです。
多くの出版社では、受賞者に対して、 Web 上で無用公開している作品の非公開または連載の中止を指示します。
もしくは、『新章の冒頭のみ公開を許可して、続きは書籍に収録』というサンプル商法を促す場合もあります。
小説・ライトノベル新人賞には、年齢や職業などの「応募制限」はある?
原則として、新人賞に身分に関する応募制限はありません。
未成年だろうと無職だろうと、誰でも応募可能です。
出版社が新人賞を開催する目的は、売れる商品と商品生産者を発掘するためです。
優れた商品を生産できるなら、作者の身分など、出版社は問いません。
小説・ライトノベル新人賞の応募作品は、早めに投稿した方が有利?
基本的には、早めに投稿した方が有利と言えます。
多くの応募者は、応募期限のギリギリまで推敲を重ねて、応募作品の完成度を上げようとします。その結果、応募期限の終わりごろには、雪崩のごとく作品が応募されるわけです。
言い換えれば、早めに作品を応募する人は少数ということです。
下読みの選考負担を減らすなら、届いた応募作品から順次 選考していく方法を採用するでしょう。
つまり、早めに作品を応募することで、下読みに作品を じっくりと読んでもらいやすくなるわけです。
それに対して、応募期限の間際には、大量の作品が応募されてきます。下読みに回されてくる作品数は急増して、下読みの負担は一気に増大します。
少なからず、選考が雑になることが予想されます。
応募作品が早めに仕上がったのならば、応募期限ギリギリまで推敲を重ねずに、思い切って応募しましょう。
小説・ライトノベル新人賞の応募作品には、ちょっとでも誤字脱字が入っていたら駄目?
多少なら、誤字脱字が修正しきれていなくても大丈夫です。
もしも応募作品が新人賞で受賞できたなら、書籍化される前に、必ず編集者から改稿作業を命じられます。その時に、誤字脱字も直すことになります。
応募原稿の誤字脱字など、重要な問題ではありません。
もちろん、何事も限度があります。あまりにも誤字脱字が多い場合には、文章構成力という面でマイナス評価を付けられるでしょう。
小説・ライトノベル新人賞の応募原稿に添付する作者プロフィールの略歴や受賞歴は、どれくらい詳しく書けばいいの?
略歴については、最終学歴と現在の職業を書いておくだけで充分です。
フリーランスとして働いているのならば、どんな職種か書きましょう。屋号を持っていれば、そちらも併記します。
現在が無職であれば、『最後に就職していた時の職業』と『いつ頃に退職したのか』を書いておきましょう。
受賞歴については、実際に受賞したり、最終選考まで残った経験があったりするのなら、それらを書くだけで充分です。
わざわざ『一次選考を突破』や『二次選考で落選』ということまで、事細かに書く必要はありません。
略歴にしろ受賞歴にしろ、作者の情報を知るための参考資料という扱いです。一般企業の就職試験とは違って、重視されるものではありません。
神経質に考えず、さらっと書きましょう。
小説・ライトノベル新人賞は、新商品開発のコンペティション
ここまで記事を読んでくださったなら、小説・ライトノベル新人賞は、新商品開発のコンペティション(競争会)であることを理解できたでしょう。
小説・ライトノベル新人賞の応募作品には、商品価値の高さが求められます。
残念ながら、創作物の芸術性や文化財としての価値などは、レーベルから求められません。
次の3点を意識して、商品価値のある小説・ライトノベルを作り上げましょう。
- 娯楽物としての商品価値があるか。
- より多くの読者を楽しませられるか。
- 出版社に多額の利益を生み出してくれるか。
小説・ライトノベル新人賞の選び方
小説・ライトノベル新人賞は、数多くあります。また、求められる『小説の種類』や『物語のジャンル』は、多岐に渡ります。
どの小説・ライトノベル新人賞が自分に向いているのか分からなくて、混乱してしまうことでしょう。
自分がどの小説・ライトノベル新人賞に向いているか判断できない場合は、小説の新人賞の選び方を読んでみてください。
『小説の種類』と『物語のジャンル』の説明から始めて、あなたの得意や強みから、 どういった小説・ライトノベル新人賞を応募先にすればいいか分かるように整理してあります。
小説・ライトノベル新人賞の公募まとめ|応募総数・倍率・賞金額を一覧表に
小説の種類(純文学・大衆小説・ライト文芸・ライトノベル)ごとに、新人賞の情報をまとめました。
個別の詳細データ票には、最大で過去 10 回分の応募総数・倍率・賞金額・受賞作品名を一覧表として掲載しています。
さまざまな新人賞の情報を比べたい時に、ご覧ください。
純文学の新人賞の公募一覧
大衆小説の新人賞の公募一覧
ライト文芸(キャラ文芸)の新人賞の公募一覧
ライトノベルの新人賞の公募一覧
推理・ミステリーの新人賞の公募一覧
小説・ライトノベル新人賞の取り方&応募作品の書き方のまとめ
- 出版社にとって、小説・ライトノベルは『商品』である。
- 商品価値の無い小説・ライトノベルを新人賞に応募すると、確実に落選する。
- 小説・ライトノベルの面白さが減るなら、作者の思想・価値観は削るべき。
- 小説・ライトノベル新人賞では、選考が進むごとに大量の応募作品が振るい落とされる(電撃文庫の場合は、6割~9割)。
- 小説・ライトノベル新人賞の突破を狙うなら、まずは下読みに評価されることを考えよう。
- 一次選考の落選原因
- 応募要綱の規約を守っていない
- レーベルの特色と一致していない
- 小説の体裁になっていない
- 文章が読みづらい
- 二次選考の落選原因
- 物語の展開に起伏が乏しい
- 登場人物に共感・感情移入できない(特に主人公)
- 主人公が活躍しない
- 既存作品の二番煎じ
- 三次予選を突破するために、オリジナリティ(独創性)の高さが必要になる。
- 最終選考は、テーマ・コンセプト・世界観・オリジナリティ(独創性)・プロット・キャラクターが平均以上に魅力的であることが重要になる。
- 応募する小説・ライトノベルは、出版社のブランドイメージに合わせる。
- 傾向と対策を重視しすぎて、過去の受賞作の模造品を作らないこと。
- 読者にカタルシスを与えることを最優先して、物語の設定を組む。
- 想定する読者像を明確にする。
- 想定読者が現実世界に抱いている不満を把握する。
- 主人公は、『想定読者の自己投影のしやすさ』を重視する。
- テーマ・コンセプトは 10 個を目指して作り、最も読者受けしそうなものを選ぶべし。
- 選んだテーマ・コンセプトを元にして、プロットも 10 個を目指して作り、最も読者受けしそうなものを選ぶべし。
- 王道要素を入れつつも、捻りを加えて差別化を図る。
- 世界で面白いと思われている物語構成の特徴をつかもう。
- 小説タイトルの段階で、下読み・選考委員が興味を引こう。
- 小説の冒頭(書き出し)の段階で、下読み・選考委員が興味を引こう。
- 小説・ライトノベル新人賞は『新商品開発の競争会』と心得えよう。